翻訳支援ツールと相性が良い医薬文書とは?使わない方が良い文書についても解説
こんにちは、かおりちゃんです。
医薬翻訳において翻訳支援ツールは欠かせない存在。
翻訳効率を高め、品質向上やコストダウンなどさまざまなメリットがある翻訳支援ツールですが、実はすべての文書に対してメリットを発揮できるわけではありません。
文書によってはそれほど大きなメリットがなかったり、むしろ翻訳支援ツールを使用しないほうが効率的という場合もあるんです。
今回は医薬文書において、翻訳支援ツールと相性が良い文書、相性が悪い文書について解説していきます。
翻訳支援ツールについて詳しく知りたいという人はこちらの記事もご覧ください!
翻訳支援ツールの機能
翻訳支援ツールにはさまざまな便利機能がありますが、中でも重要なのが「翻訳メモリ(TM)」といわれる機能です。
翻訳メモリは、原文と訳文が対になっている対訳データ。翻訳した内容はすべてこの翻訳メモリに登録され、翻訳時に参照したり、再利用することで、文書によっては大幅な作業効率化、納期短縮、コスト削減が可能。また、翻訳内容を資産として蓄積できます。
翻訳支援ツールには得意な文書とそうでない文書があるため、利用の際は見極めが肝心です。
医薬の文書種類
医薬翻訳で扱う文書は範囲が広く、多岐に渡ります。
- 医薬品に関する文書
- 医療機器関連
- 学術論文
- 医薬部外品、バイオ医薬品関連 など
文書によって発生するタイミングや原稿の形式、納期など、特徴が大きく異なり、翻訳支援ツールと相性が良い文書に使用することで、大幅に作業を効率化できる可能性があります。
翻訳支援ツールと相性が良い文書
翻訳支援ツールと相性が良い文書の特徴は下記のとおりです。
- 繰り返しが多い文書
- 定形表現が多い文書
- 改定を繰り返す文書
1つずつ見ていきましょう。
繰り返しが多い文書
1度翻訳した内容は翻訳メモリに登録され、2度目以降は訳文を再利用できるため、何度も同じ翻訳をしなくてすみます。
例えば原稿内に同じ用語が100回登場する場合、最初の1回だけ翻訳すれば残りの99回は翻訳しなくて良いということです。そのため翻訳支援ツールは繰り返しが多い文書ほど威力を発揮します。
<相性が良い文書例>
- マニュアル
- 標準作業手順書(SOP) など
定形表現が多い文書
「フォームが決まっている」「項目名が大体同じ」など、同じような文言や表現は翻訳支援ツールが得意とするところです。
ファイル内だけでなく、ファイルが変わっても、同じような文言は翻訳メモリの訳文をそのまま流用したり、必要な部分だけ変更すれば翻訳を完了できます。
決まった指定用語がある場合は用語集も活用することで、より効率的に精度の高い翻訳ができます。
<相性が良い文書例>
- 契約書
- 添付文書
- 安全データシート(SDS)
- 製造指図書
- 製造販売承認申請書
- 試験計画書 / 報告書 など
改定を繰り返す文書
頻繁に改定される文書は翻訳メモリを活用することで、「改定していない部分」は旧版をそのまま流用し、「改定で変更になった部分」のみを新たに翻訳できます。
目視で改定箇所を確認する必要がないので、作業効率と正確さアップが期待できます。
<相性が良い文書例>
- マニュアル
- 標準作業手順書(SOP)
- 製品仕様書
翻訳支援ツールと相性が悪い文書
以下のような文章は、翻訳支援ツールの利点を最大限に発揮できず、場合によってはむしろ納期が長くなってしまうかもしれません。
- 定形性や繰り返しが少ない文書
- 納期が短すぎる案件
- スキャン原稿
1つずつ解説していきます。
定形性や繰り返しが少ない文書
文献などの読み物的な要素が強い文書は重複もほとんどなく、翻訳メモリを蓄積しても再利用する機会が少ないため、翻訳支援ツールとは相性が良くありません。
用語集や、文書間の串刺し検索、用語の一括置換など、翻訳メモリ以外の機能でメリットを出すことはできますが、場合によってはそのまま翻訳した方が早く仕上がる可能性があります。
<相性が悪い文書例>
- 学術論文
- 投稿論文 など
納期が短すぎる案件
翻訳支援ツールは翻訳作業を開始するまでに時間がかかるため、短納期すぎる案件には向かない場合があります。
翻訳支援ツールで翻訳を行う場合、作業フローは以下のようになります。
- 原稿ファイルの前処理
- 原稿ファイルを翻訳支援ツールへアップロード
- 翻訳・校正作業
- 翻訳支援ツールから完成した訳文を書き出し
- (必要に応じて)レイアウトの調整
- 最終チェック
- 納品
原稿ファイルの前処理では、文字が読み込めない画像部分のテキスト抽出、翻訳不要箇所の除外、不要な改行の削除などを行います。
このため翻訳作業を開始するまでには多少時間がかかり、納期があまりにも短い場合は、このような作業をしているよりもそのまま翻訳をした方が早く仕上がる場合があります。
<相性が悪い文書例>
- 照会事項
- 症例報告 など
スキャン原稿
紙の原稿をスキャンした原稿形式は、そのままでは文字を読み取れないため、すべてテキスト化する作業が発生します。
テキスト化された原稿は、文字の打ち間違いがないかなどのチェックを経てようやく翻訳支援ツールにアップロードできます。
そのため、翻訳する分量が少なかったり、当日や翌日納期など、納期が極端に短い案件では無理に翻訳支援ツールを使うより、そのまま翻訳したほうが早く仕上がる場合があります。
一方、納期が十分にあり分量も多い場合は、始めに時間をかけてでもテキスト化して翻訳支援ツールを使うことで、文書によっては最終的に早く翻訳を完了できることもあります。
<相性が悪い文書例>
- 照会事項
- 症例報告
- 文献 など
まとめ
翻訳支援ツールの得意な文書、不得意な文書を知ることで、翻訳をより効率的に行えます。
原稿内容やデータの形式、お客様の希望納期などによって最適な工程は変わりますが、そこは翻訳会社の腕の見せ所。Word Connectionでは経験豊かな熟練の翻訳コーディネーターが、最適な工程をご提案します。
医薬分野にも幅広く対応していますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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